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楽しく難しいマーケティング

マーケティングを研究対象にする者として、ときどきおかしな感覚に襲われることがあります。
さまざまな事例を目にして、その背後にあるロジックや担当者の意図などに考えをめぐらすと、洗練された手法やマーケターの多大な努力に素直に感動することもしばしばです。
一方、そうしたマーケティング研究者の立場ではなく、一人の消費者としてテレビCMを見たり店頭の陳列を眺めたりする際には、「企業の狙いどおりに素直に行動なんかしないぞ」と、ヘソ曲がりの考えを抱いたりもします。
マーケティングの楽しさと難しさは、まさにここにあるのかなと思います。つまり、素直に言うことをきいてはくれない相手(消費者や取引業者)との間で、いかに自分と相手の双方にとって好ましい関係を築くことができるか、というマーケティング課題の特性です。
守るべきルールを制定したり、無理やり何かを押しつけたりするやり方ではなく、相手に能動的に自分のことを選んでもらえるような関係をつくること。
そうしたマーケティングの発想に触れたことが、この分野の研究を私が志すことになったきっかけでした。

新たな関係を生むインターネット

その意味で、近年のインターネットに関わる動向にはとても関心をもっています。企業と消費者、企業同士、あるいは消費者同士でも、従来なら関わることのなかったような相手と、今までに経験をしたことがないような関係のなかに置かれるような状況が、インターネット空間では生み出されているからです。関係づくりという点で、企業のマーケティング活動は非常に大きな影響を受けるはずです。
とりわけ、ネット・コミュニティの役割は注目されます。さまざまなファン・サイトや個人ブログのつながりを通じて、人々が活発なコミュニケーションを楽しんでいます。消費者が、自分自身の判断を下すためにネット・コミュニティの仲間からサポートを受けたり、あるいは逆に他人を助けるために自らの意見や経験をネット上で情報発信したりしているのです。
そんな場で、企業がどうやってその仲間の一員として加わるのか。ネット空間のどんな相手と、いかなる関係を築いていけばよいのか。
インターネット時代に活動する企業が継続的に考えていかなければならない、難しくて面白いマーケティングの新たな課題だと思います。

流通科学大学商学部
教授

1972年生まれ。
2006年神戸大学大学院経営学研究科博士課程修了。
奈良大学社会学部専任講師、流通科学大学商学部専任講師を経て、
2004年より現職。
専攻は、マーケティング、製品開発マネジメント、
インターネット・マーケティング。
現在、インターネットを活用した
「消費者参加型製品開発」の可能性をはじめとして、
企業とネット・コミュニティとの関係についてその特性や
新たなビジネス・モデルの可能性を主な研究テーマとしている。
また、ケース・メソッドを用いたマーケティング研修や、
地方産品のマーケティング展開に関する講演・共同研究など、
全国で活動をおこなっている。
テレコム社会科学賞奨励賞を受賞。